2019年にフランス・カンヌでの授賞式に出席したときはShortlist X1。世界トップクラスのクリエイティブを眼と身体で感じることができ、同時に今後の課題を考えさせられた貴重な機会でした。「もっと技術と感覚を研ぎ澄ませアートディレクションやグラフィックを飛躍させるヴィジュアルテクノロジストとして進化したい」そう決意しながら帰国しました。
あれから2年が経過した2021年、【NHK 浮世絵EDO-LIFE The Hidden Essence】で、我々はCannes Lions 2020/2021においてBRONZE X1とShortlist X2を受賞しました。NEW YORK ADCでのGOLD X2 / BRONZE X1の受賞に続き、Cannes LionsでのBRONZE X1 / Shortlist X2の受賞は、にわかには信じられないほどのたいへんな栄誉です。総エントリー29,074という作品数と、他の受賞作品を拝見し改めてそう思います。
しかし2年前と大きく変化していたのは「チーム全員がブロンズでも納得していなかった」という点です。改善点や反省点、他の受賞作品の研究など、受賞を喜びつつも冷静に意見交換が行われている。自分はこのクリエイティブチームの雰囲気がとても健全だと感じています。
授賞式会場でレッドカーペットを駆け上がり、映画そのものの授賞式や参加者の熱気に触れていると、その雰囲気に圧倒され酔って終わってしまいがちです。ですが重要なのは「受賞はあくまで通過点であり、クリエイティブに終わりはない」という現実。変わらず地道な歩みを継続することでしか前に進めない。そんな我々の不器用さをいささか認めてあげれたことが、いちばんのご褒美だったかもしれません。
これからも我々はクリエイティブを支えるヴィジュアルテクノロジストとして、技術と感性を磨いていく所存です。
【製作プロセス】
CD竹林氏とAD伊佐氏による全体のコンセプト設計に基づき、画像処理後の完成ヴィジュアルの優劣や印象などを予測しながら、膨大な浮世絵のアーカイブスの中から素材候補を選定。欠損・分離している浮世絵の修復作業から始まり、当時の顔料の色再現、最終ヴィジュアル印刷に必要なマスクの作成、全体構図を見ながらの画像の抑揚・強弱の制御、視点の動きの計算をクリエティブチームと綿密に打ち合わせながら、繊細に仕上げていっています。タイポグラフィックとしてのインパクトと、深遠な印象の高濃度グラフィックス。我々クリエイティブチームが目指したものはまさに【Hidden Essence】でした。
【2020 YOUNG GUNS 18への選出】
また同作品でArt Directorの伊佐奈月氏が[2020 YOUNG GUNS 18]のグラフィックデザイン部門に選出されています。
注:1975年に設立された権威ある団体[The One Club for Creativity]による「Young Guns 18」は、30歳以下のクリエイティブプロフェッショナルの前衛を表彰するアワード。2020年は40カ国からの応募があり、9月に19カ国 83人のグローバルファイナリストが選出、最終的に[Young Guns18]として11カ国 31人にその栄誉が授与されました。
【NHK 浮世絵EDO-LIFE The Hidden Essence】
[CANNES LIONS 2020/2021]
PRINT & PUBLISHING 部門 Bronze
DESIGN 部門 Shortlist
OUTDOOR 部門 Shortlist
[STAFF]
CLIENT / NHK
CREATIVE DIRECTION / Kazushige Takebayashi (竹林一茂) [SHA Inc.]
ART DIRECTION / Natsuki Isa (伊佐奈月) [SHA Inc.]
COPY WRITER/ Shigeru Isobe(礒部滋)
DIGITAL TECHNOLOGIST / Miki Kudo (工藤美樹)
PRINTING DIRECTOR / Shunichi Yamashita (山下俊一) [SHOEI inc.]
MOVIE / Kotaro Takano (高野光太郎)[Cosaelu ]
PHOTO / Akihiro Yoshida (吉田 明広)[1002 inc.]
NY ADC 99th Annual Awardsで審査員のHJALTI KARLSSONが丁寧に講評をしてくれました。